悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 彼は格子の隙間から皮袋の口をそっと傾け、私の唇を湿らせてくれた。

 「最後に伝えておく。君の供述は記録に残した。いつかこの国が正しい方向へ戻ることを……今は、祈るしかできない」

 私は頷けなかった。
 頷く力が、もうなかった。

 ルキウスは立ち上がり、短く頭を垂れる。

 「どうか――」

 言いかけて、結局何も言わず小さく首を振って去っていく。
 掛ける言葉が見つからなかったのだろう。

 足音が遠ざかる。
 地下牢に暗闇が戻る。
 冷たい石床が背中に貼りついて、凍えそうだった。

 まぶたを閉じると、姉の優しい微笑みだけが鮮やかによみがえった。

 姉のアイリス・ガーランドが後宮に召し上げられたのは三年前。
 少し遅れて、十九でデビュタントを無事終えた年のことだった。

 王宮主催の夜会で国王に見初められたとかで、シーズンを終えて領地に戻った直後、王宮の使節団が迎えに来て、その日のうちに王都に連れ戻された。

< 157 / 206 >

この作品をシェア

pagetop