悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
彼は格子の隙間から皮袋の口をそっと傾け、私の唇を湿らせてくれた。
「最後に伝えておく。君の供述は記録に残した。いつかこの国が正しい方向へ戻ることを……今は、祈るしかできない」
私は頷けなかった。
頷く力が、もうなかった。
ルキウスは立ち上がり、短く頭を垂れる。
「どうか――」
言いかけて、結局何も言わず小さく首を振って去っていく。
掛ける言葉が見つからなかったのだろう。
足音が遠ざかる。
地下牢に暗闇が戻る。
冷たい石床が背中に貼りついて、凍えそうだった。
まぶたを閉じると、姉の優しい微笑みだけが鮮やかによみがえった。
姉のアイリス・ガーランドが後宮に召し上げられたのは三年前。
少し遅れて、十九でデビュタントを無事終えた年のことだった。
王宮主催の夜会で国王に見初められたとかで、シーズンを終えて領地に戻った直後、王宮の使節団が迎えに来て、その日のうちに王都に連れ戻された。
「最後に伝えておく。君の供述は記録に残した。いつかこの国が正しい方向へ戻ることを……今は、祈るしかできない」
私は頷けなかった。
頷く力が、もうなかった。
ルキウスは立ち上がり、短く頭を垂れる。
「どうか――」
言いかけて、結局何も言わず小さく首を振って去っていく。
掛ける言葉が見つからなかったのだろう。
足音が遠ざかる。
地下牢に暗闇が戻る。
冷たい石床が背中に貼りついて、凍えそうだった。
まぶたを閉じると、姉の優しい微笑みだけが鮮やかによみがえった。
姉のアイリス・ガーランドが後宮に召し上げられたのは三年前。
少し遅れて、十九でデビュタントを無事終えた年のことだった。
王宮主催の夜会で国王に見初められたとかで、シーズンを終えて領地に戻った直後、王宮の使節団が迎えに来て、その日のうちに王都に連れ戻された。