悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 両親の反対を振り切り、後宮に潜り込むため領地を出た。
 潜入方法は単純だ。母方の分家名を名乗り、推薦状を金で手に入れる。
 貴族としての礼儀作法は身についていたから、無事採用され、下級女官として洗濯室の配属となった。

 下級だろうと、上級に上がれる可能性はゼロではない。
 成り上がりを夢見て蹴落とし合いが日常化した、どこかピリピリした職場において、私は驚くほどスムーズに馴染むことができた。

 両親にブスだデブだと嫌われたこの容姿では、陛下に気に入られることもないだろうと、勝手に警戒を解いてくれるのだ。
 ずっとコンプレックスだった容姿のおかげと思うと複雑だったが、姉の真相を探るには都合がいい。

 下級女官はおしゃべりだ。
 基本的に王宮の敷地内しか外出できない身では、鬱憤が溜まるのだろう。
 仕事の合間に交わされる噂話の数々には辟易したが、じっと聞き役に徹した。

 虚実入り混じる噂も、数を集めれば輪郭が見えてくる。特に悪い噂は広まりやすい。
 よく聞く名前は『イレーヌ』『ヴェロニカ』『リュシー』。
 彼女たちの派閥が実質この後宮を牛耳っていると、把握するのは容易かった。

 気に入らない女官を貶め、陥れ、自分たちの有利になるよう立ち回る。
 平気でライバルの悪行を捏造し、陛下に訴え追い出させる。
 ひどい時には処罰されることもあるのだとか。

 きっと彼女たちが姉の死に関わっている。
 そう感じた私の勘は間違っていなかった。

 だけどそれだけではない。
 この後宮は、いいやこの国は、腐りきっていたのだ。

 断片をかき集め繋ぎ合わせて、私はひとつの真実に辿り着いた。

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