悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 それでも最初のうちは、なんとか脱獄して全員に復讐してやると怒りに燃えていた。
 一度だけ見物に来たロエルが、私の姿を見て「本当に姉妹なのか?」と大笑いして去っていったのも燃料となった。

 だが硬い炭のような黒パンに水のようなスープを一日に一食しか与えられず、みるみる痩せていく。
 日に日に身体が衰弱していくのに比例して、怒りの炎は鎮火していった。
 冷たい石の床は体力を容赦なく奪って、次第に起き上がることすら億劫になった。

 国王もイレーヌも、もう私の存在など綺麗に忘れ去っているだろう。
 姉のことさえもきっと。

 私がしたことは全て無意味に終わった。
 姉の名誉を回復することもできずに。

 もう何もかもを諦めて、死を望むようになった頃、その男は現れた。

 「姉君の死は表沙汰にならなかった」

 床でうずくまる私に、ルキウスと名乗った男が苦しそうに真実を告げる。

 「後宮のスキャンダルを隠すため、彼女の裁判は一部の法務官のみで秘密裏に行われた。私はそれを知らされなかった……いや、これは言い訳だな」

 私が国王に飛びかかった時、側で厳しい表情をしていた長身の男。
 それが宰相だと知ったのは、彼がこの汚物とカビ臭さの充満する地下牢に、自ら足を運んだときだ。

 ロエルのように無様な私を笑いにきたのかと身構えた私に、ルキウスは名を名乗り、私の言い分を聞き入れ、事実を調べると約束してくれた。
 「あまりに理不尽なことが多すぎて、無意識に違和感から目を逸らすようになってしまっていたらしい」

 無言のままの私に、ルキウスが続ける。
 王を諫め正すこともできない臣下ですまないと。
 家族のために声を上げた者を罪人として見殺しにするしかできないと、悔しそうな彼に少しだけ救われる。

 私が檻の中でただ弱っていくしかできない間に、彼は王宮内を駆けずり回って実態を調査してくれていたらしい。

 誰も知ろうとしなかった姉の死の真相に辿り着き、私へのこの仕打ちが間違っていると憤る人がいる。
 その事実が、最後に私の心をほんの少しだけ温めてくれた。

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