悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 知っている。覚えている。
 ここは後宮でも地下牢でもない、確かに私が生まれ育った領主館だ。

 「あらお嬢様、お目覚めでしたか。今ちょうど呼びに行こうと」
 「ねぇ! どうして私はここにいるの!?」
 「え!?」

 ちょうど階段を上ってきたメイドに勢いよく掴み掛かる。
 馴染みの顔だ。
 彼女は怯えたように身を竦め、「ちょ、朝食のご用意が整ったので」と蚊の鳴くような声で言った。

 彼女をその場に押しやって、慌てて階段を駆け降り食堂へと向かう。
 勢いよく扉を開ける。
 そこには両親と兄が揃っていて、私の登場に呆れたようにため息をついた。

 「まったく……もうすぐデビュタントだというのにいつまでも落ち着きのない……」
 「着替えもせずに食事? いいご身分だこと」
 「おい、汗が見苦しいと言っているだろう。早く拭け」

 見下すことに慣れた冷たい視線。
 罵ることに快感を見い出し醜く歪む顔。
 私を攻撃対象とすることでストレス発散することに楽しみを覚えた家族たちの中で、唯一変わらず優しかった姉がいない。

 ではここは地獄なのだろう。
 人を恨んで、憎んで、汚い気持ちのまま死んだから。

 「お姉様……」

 呟き、意図せず涙がこぼれ落ちる。
 あとからあとから溢れて止まらない。

 「まだ言っているのか。終わったことをいつまでもグダグダと……」
 「陛下に見初められて後宮入りなんて、栄誉あることでしょうに」

 私の呟きを聞き咎めて、父と母が大袈裟なほどのため息をついた。

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