悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「……わかりました。部屋を与えるだけですよ?」

 うつむいた僕の代わりに、ルキウスがため息混じりに代替案を提示する。

 「教育期間はきっちり一年半。その者が優秀だったとしても、側室として扱うには必ずその期間を空けていただくこと」
 「むぅ……仕方あるまい。たしかに、貴族社会に馴染むにはそれだけの期間は必要であろう」

 無茶を通した自覚はあるらしく、父は渋々といった顔でその案を受け入れた。

 「部屋に会いにいく時は必ず供の者を連れていくこと」
 「また面倒なことを……」
 「素性もよく分かっていない女と二人きりにするわけにはいきませんから」

 御身を守るためです、とルキウスが言う。

 「バルメロ侯が連れてきたのだから身元は問題なかろう」
 「だとしてもです。ハニートラップや暗殺の可能性がゼロというわけではありませんから」

 なんとかロベリアに傾倒しすぎないよう対策しているのだろう。
 ルキウスが次から次へと約束事を提示していく。

 「教育期間中に身辺調査を済ませますので。それまでは絶対に手を出さぬよう」
 「……善処しよう」
 「もし約束を破られたら、発覚次第、即追放します」
 「なに!? いくらなんでもそれはやりすぎであろう!」
 「そ、それに何か失礼があっては大変ですので」

 ルキウスを援護するためにも必死に自分を奮い立たせ、言葉を繋げる。

 「見た目だけでなく、父上好みの淑女に育て上げてみせます」

 そんなことが果たしてできるだろうか。

 さっきロベリアが一瞬だけ自分に向けた視線を思い出して、ヒヤリと背中が冷たくなる。
 父に向けたのとは違う、どこか冷徹な、値踏みするような視線。
 気を抜いた瞬間、喉笛に噛みつかれそうな、一筋縄ではいかない危機感を覚えた。
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