【4/5書籍発売】悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「それにたとえ一度目のことが全部本当にあったことだとしても、この世界ではまだ何も起こっていないのよ」

 姉は死なず、火傷もせず、ロエル殿下の理不尽にさらされることもなく。
 陛下に見捨てられてもいないし、イレーヌからの嫌がらせも私が来て以来止まっている。

 「そんなの、ただの殺人鬼よ」

 そしたらまた処刑ね、と首に食い込む縄の感触を思い出し、青ざめながら言う。

 「確かにそうだな」

 ルキウスがなるほどと楽しそうに笑う。

 「笑い事じゃないわよ」
 「はは、すまない」

 恨みがましい目を向けても、ルキウスの謝罪は分かりやすく口先だけで、呆れてしまう。

 「ま、結局全然うまくいかなかったんだけど」

 その軽い調子に気が抜けて、ソファの背にもたれる。

 陛下は愛する女のために頑張るどころかますます後宮に入り浸り。
 ロエル殿下は後宮の風紀を乱すなと釘を刺したのにさらにかき回し。
 イレーヌには足を引っ張るのではなく自分を高めろと忠告したのにまったく響かず。

 その上、一番大切な姉に怪我まで負わせて。

 「なんなのよ、もう」
 「私としては期待以上の成果だったと言わずにいられんな」

 ボヤく私に、ルキウスが満足げに笑う。

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