【4/5書籍発売】悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「陛下は今回の責任を取り引退。ロエル殿下は心神喪失で継承資格なし。唯一無傷なエミリオ殿下が王位を継ぐことに、文句を言う輩はいないだろう」

 ルキウスがニヤリと悪どい笑みを浮かべる。
 重体の陛下を心配するでもなく、元凶の私に協力していた後ろめたさも感じない、弾んだ声だ。

 「……あなたって思っていたより腹黒いのね」
 「どこでどんな噂を聞いたのか知らんが、一国の宰相がお綺麗なだけでいられるわけがないだろう」

 半ば呆れて言うと、彼はむしろ誇らしげに笑った。

 彼は「この国の唯一の良心」と民衆に評されているのを知っているらしい。
 その噂をもとに、私が彼を頼ったと思っているようだ。

 だけど違う。
 前の人生の最期。地下牢で打ちひしがれていた時。
 唯一私の訴えを親身に聞いてくれた。
 姉の名誉回復と私の処刑撤回を求めて走り回ってくれた。
 この国の行く末を憂いて、自分の力不足を悔やんで、絶望していた。
 その誠実さを、この目で見てきたから。

 処刑の直前、私を庇ったことで降格処分が決まったのだと、牢番が厭味ったらしく教えてくれた。
 きっとそうなることも分かっていた。
 それでも行動してくれたのだろう。
 国王の不出来を謝罪したあの時の悔しそうな顔はこの先もきっと忘れない。

 ルキウスは覚えていないだろうけど、と思った後で、たとえ覚えていたとしてもあの時の自分とは違いすぎて、どちらにしろ気づかれなかったかと少し笑う。

 「何がおかしい」
 「いいえ、なんでも」

 怪訝な顔をするルキウスに、曖昧に返す。
 私の計画はボロボロだったけど、あの彼が今、清々しい顔で笑っているのが嬉しかった。
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