悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽イレーヌ・カリスティア

▽イレーヌ・カリスティア


 談話室に続く廊下を、胸を張って進む。
 清々しい気分だ。今日はなんていい日なのだろう。

 「ねぇ見た? あの顔!」
 「何時間も待って、おかしいと思わなかったのかしら」
 「あの子頭弱そうよね」

 わたくしの引き立て役たちが、気を引こうとしきりに話しかけてくる。
 彼女たちはいつだってわたくしの機嫌を取りたくて仕方ないのだ。

 「あらいけませんわ、そのようにおっしゃっては」

 それを可愛らしく思いながらも、上に立つ者としてやんわりと嗜める。
 取り巻きたちは「ごめんなさーい」と甘えるような声で詫びて、それから「でもイレーヌ様もそう思いませんこと?」と同意を求めてきた。

 「そうですわね……確かに少しのんびり屋さんなところはあるのかも」

 わたくしが言うと、リュシーが「キャハハッ!」と下品な笑い声を上げた。

 談話室のドアを開けると、中にいた十人近い女官たちの視線が一斉に集まった。
 もう夜も遅い時間だというのにも関わらず部屋に戻らないのは、アイリスの上級昇格の行方が気になっているせいだろう。
 皆わたくしと目が合いそうになると、慌てて顔を背けた。

 「でも残念ですわ。ようやくアイリスさんともっとお話しできるようになると思いましたのに」

 定位置となっている談話室の一番座り心地のいいソファの中央に腰を下ろしながら、ヴェロニカが会話を続ける。

 「本当。イレーヌ様のお部屋の近くにいらっしゃるのを、私たちも心待ちにしておりましたのに」

 リュシーが言うと、わたくしを囲むように座りながら他の子たちも同意する。
 それでアイリスが今夜陛下の寵愛を得られなかったことを悟ったのだろう。
 聞き耳を立てていた他の女官たちが、ホッとした顔で談話室を出ていった。

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