悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「うふふ。皆様気が気ではなかったみたい」

 微笑みながら言うと、取り巻きたちが同調するようにクスクスと悪意のある笑みを交わし合った。
 彼女たちは大きな声でアイリスの悪口を喚き立てるが、それを注意する者はいない。
 きっとここにいる誰もが心の中で快哉を叫んでいるはずだ。

 あの顔がいいだけの、田舎くさくて愚鈍なアイリス・ガーランド。
 大した教養もないくせに、ボロが出ないようあまり喋らないせいで、清楚だの控えめだのと過大な評価を受けて、訂正もしない図々しい女。

 他の上級女官たちは、寵愛を奪われてしまうのではないかとかつてない焦燥感に悩まされていたに違いない。
 わたくしは泰然と構えていられたけれど、さすがに大切な初夜を陛下にすっぽかされたのは少々小気味よかった。

 「エミリオ殿下も私に伝言を頼むなんて、ちょっと間が抜けてらっしゃるわよね」

 ヴェロニカが嘲笑混じりに言う。
 殿下が陛下の予定変更を伝える役に選んだのは、アイリスと同時期に後宮入りした中級女官のヴェロニカだ。
 彼女はアイリスと違って陛下の昼の訪れもなく、アイリスが優先されたせいで教育期間を延長された哀れな娘だ。
 まともに伝えるはずがないことなんて、少し考えれば分かりそうなものなのに。
 案の定ヴェロニカは寝所に向かう殿下に、お忙しいでしょうからと親切顔で伝言を受け取り、わざと何時間も伝えず放置した。

 陛下とは似ても似つかない、取り入っても大して旨みのない第二王子。
 本人に自覚はなさそうだがアイリスに懸想しているのは見え見えで、そのくせ彼女に悪意のあるものを見抜くこともできないボンクラ。
 どうせアイリス以外の女官が全て同じに見えているのだろう。

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