悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「分からないのか?」

 困ったやつだとルキウスが柔らかく笑う。

 「単身後宮に飛び込む度胸。頭の回転の速さ。家族を思いやり、自分の身を犠牲にしてでも守る覚悟。挙句に国を丸ごとひっくり返してしまった」

 惜しみなく注がれる賞賛の数々に、乾きかけていた目尻がまた滲んでいく。
 誰かに褒められたくて始めたことじゃないはずなのに、ルキウスが私を認めてくれることがこんなに嬉しいなんて。

 「好きにならない方がどうかしてる」

 言いながらルキウスが立ち上がり、私の前で跪いた。
 手の甲に、涙がポタリと落ちる。その手に、ルキウスがそっと大きな手を重ねた。

 「すぐに返事をとは言わない。一つの選択肢として考えておいてくれないか」
 「それは、そんな、でも」

 伝えたいことは山程あるはずなのに、うまく言葉が出てこない。
 後から後から嗚咽がこみ上げて、呼吸すらままならなかった。

 「アイリス様の侍女として王宮入りすれば、さばききれない量の縁談が舞い込むだろう。そうなってからでは、私のプロポーズなど埋もれてしまうからな。要は焦った」

 計算高い腹黒宰相らしからぬ稚拙な告白だ。
 だけどその不器用なプロポーズが、私にとっては何よりも嬉しい。

 話を聞いてくれた。
 信じてくれた。
 傷つかないよう守ってくれた。

 そんな人を、私だって好きにならないわけがない。

 ルキウスが苦笑しながら「つけ込むような真似をして悪かった」と言って立ち上がる。
 離れていく手の温度が切なくて、咄嗟にその手を掴んだ。

 驚いたような顔で見返すその表情が愛しくて。

 「私も、あなたが好き」

 国王を手玉に取った悪女とは思えない、なんの駆け引きも色気もない言葉が、自然に口から滑り落ちた。

 ルキウスはぽかんと口を開けた後、これ以上ないくらい嬉しそうな笑みを浮かべて、強く私を抱きしめた。
< 201 / 206 >

この作品をシェア

pagetop