悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 ぺちゃくちゃとうるさい女たちに半ば辟易してため息をこらえていると、談話室のドアが開いた。
 なんの気なしにそちらを見て、眉間にシワが寄る。
 わたくしだけではない。その場にいた全員が、現れた女を見て一様に表情を険しくした。

 談話室の中がシンと静まり返る。
 誰かがティーカップを置く音が、妙に大きく響いた。

 「へぇ、こんな時間なのに結構人がいるのね」

 剣呑な視線を一身に浴びているというのに、女は気にした様子もなく中央に進み出た。
 鈍いのか、肝が太いのか。

 「みんな暇なの? まぁ楽しいことなさそうだもんね、ここ」

 下品な言葉づかい。安っぽい生地のワンピースに、場末の娼婦めいた赤いピンヒール。
 それでもなお異様なほどの存在感を放っているのはその容姿ゆえ。

 誰も一言も発せないまま、彼女から視線を逸らせないでいる。
 間違いない。この女こそ、アイリスの初夜を邪魔した新入りの街娘だ。

 確信して自然と目つきが鋭くなる。

 「ええと、こちらは女官共用の談話室です。もう一室ありますので、他の女官と交流したい場合はこちらへどうぞ」

 新人に続いて説明しながら入ってきたのは、案内役を任されたらしい女官だ。
 その人選に、眉根が寄る。

 新入りがこの部屋に案内されるのは何もおかしくない。
 ここは共用スペースだし、下級女官が毎日掃除する場所でもある。

 おかしいのは案内役がなぜ彼女なのかということだ。
 彼女は何年も陛下の目に止まることなく、中級女官にすら昇格できない冴えない女だ。
 だけど女官歴だけは長く、後宮のことならなんでも知っている。そのため上級女官専属のようになっていて、わたくしもよく用事を言いつけている。
 その女官が、どうして新入りの案内役なんて。

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