悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「今日入ってきたばかりのあなたは最下位。まずは身の程を弁えなさい。分かるわね?」

 あまり調子に乗るものではないわと、言外に含めて優しく微笑む。
 たとえ陛下の視界に一瞬だけ入り込んだのだとしても。
 せいぜい数日のことで、あとは飽きられてみじめな思いをするだけなのだから。

 「……はぁい。分かりました、イレーヌ、さ・ま」

 ロベリアがわざとらしく敬称を強調する。

 「じゃあ、早く一番上になって威張り散らせるように頑張りますね」

 それから挑発するように笑う。

 微笑を崩さぬまま、けれど頬の筋肉がひくりと痙攣した。
 わたくしがなにか言う前に、ロベリアはくるりと踵を返し「行きましょ」と案内役を押しながら談話室を出ていった。

 「なっ、何よあの女!」
 「新入りのくせに生意気すぎるわ!」
 「イレーヌ様への侮辱よ!」

 扉が閉まるなり、取り巻きたちがいきり立つ。
 一見わたくしへの態度に怒っているように見える。
 だがいつまでも二人部屋の中級女官を脱せないでいる自分たちを出し抜いて、個室を与えられたロベリアへの嫉妬と焦燥ゆえのものだろう。

 まったく、困った子たちね。
 そう苦笑しながら高みの見物をしていたかったけれど、できなかった。

 胸の奥で、まだ名もないくすぶりに火がつくのを感じていた。

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