悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「そんなにいい女だったのか?」

 そんなに興味はないけど、と軽口に見せるために、イレーヌの長い髪をクルクルといじりながら問う。

 父上はその新入りがきて以来、毎日のように後宮に通っているらしい。
 もちろん個室を与えたとはいえ下級女官からのスタートだから、手を出すわけではなく昼間にお茶をして帰るだけ。

 だが、それだけしかしていないのに毎日通っているというのがもうおかしいのだ。
 アイリスが入ってきたときもまあまあ浮かれていたが、手を出せない分余計にストレスが溜まるといって、毎日通ったりはしなかった。

 今も同じ状況だというのに、女とお喋りをするためだけにいそいそと後宮に向かう姿は滑稽ですらある。
 あんなに楽しみにしていたアイリスとの初夜さえ忘れて、その女の部屋に通い詰めているらしい。

 「まぁ、そうですわね」

 面白くなさそうに、イレーヌが短く答える。
 その返事と声のトーンに、おや、と引っ掛かりを覚えた。

 いつもなら新入りのことを聞くと、やれ礼儀がなっていないだの、やれ顔がイマイチだのと饒舌にけなすのに。
 容姿でいえばイレーヌといい勝負だったアイリスでさえ、「ぼんやりして覇気のない子」と評していたくらいだ。
 今回も「顔だけ」とか「しょせん庶民の娘」とかボロクソに言うのを期待していたのに。

 「陛下の歓心を買うだけのことはあるかと」
 「へぇ、おまえが警戒していたアイリスよりも?」

 珍しいことだと思いながらも、いつものように茶化す。

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