悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「別に警戒なんて。結局はあの子も顔だけでしたもの」
 「そうだったかな」

 混ぜっ返すのはやめて苦笑する。

 アイリスが顔だけなんて、本気で思っているのは万年中級止まりの馬鹿な取り巻きだけだろう。
 アイリスは賢くて控えめないい女だ。イレーヌとは違うタイプだが、父上があの夜アイリスのもとに行っていれば、上級女官として後宮でのし上がっていったはず。

 もしかしたら容色が衰え始めたイレーヌより王妃候補に近づいていたかもしれない。

 口が裂けても言わないが、オレもどちらかと言えばイレーヌよりアイリスの方が好みだ。
 それだけに惜しくてならない。
 アイリスが純潔を散らして個室入りしたら、イレーヌのように自分のものにしようと思っていたのに。

 処女のままでは、さすがに手を出したことが露呈してしまう。
 父上の使い古しを可愛がる。今までずっとそうしてきた。それが一番揉めないやり方だ。

 「ロベリアも顔だけで大した事はありません。とにかく生意気そうな小娘ですわ。それが陛下には新鮮なのでしょう」

 余裕そうな物言いだが、表情はムスッとしていて、美しく整えられた長い爪の先を噛んでいる。

 「ふぅん。ガキっぽいのは好みじゃないなぁ」

 イレーヌの嫉妬が面倒なので、興味が失せたフリで気のない返事を返す。
 それからイレーヌの頬にキスをする。
 案の定イレーヌはあからさまにホッとした顔をして、オレの唇にキスを返した。

 「ねぇ、もう一度……」

 首に腕を絡めながら、オレの耳元でイレーヌが熱っぽく囁く。
 それは単純に欲情したからにも、話題を逸らすためにも思えた。

 ロベリアに興味を持たれたくないのだろう。
 これはもしかしたら、相当いい女なのかもしれない。

 イレーヌの豊満な胸に顔をうずめながら、オレの頭の中は別の女のことでいっぱいだった。
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