悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽ルキウス・ヴァーミリオン

 「ルキウス、余はもう行くぞ」
 「は? ご冗談を」

 会議も終盤、文官の書類を捌いている私を尻目に、陛下がいそいそと立ち上がる。

 「ルキウス殿、こちらの記入はこれでよろしいのでしょうか?」
 「いや、これはこう──」
 「ではの。あとは頼んだぞ、ルキウス」
 「陛下! お待ちを!」

 出席者の質問に答えている隙に、陛下はさっさと会議室を出た。
 威光を示すどころか、その場に座り続けることすらできない王なんて。

 喉の奥でため息を堪える。
 ロベリアという庶民の娘が後宮に入ってから、陛下の色狂いは目に見えて悪化した。
 最低限の公務すら、隙あらば抜け出して離宮に駆け込んでいる。
 教育期間中は手出し無用の約束はなんとか守らせているものの、毎日のように通い詰めてはロベリアの部屋で茶をすすっているらしい。

 本来、後宮はエミリオ殿下の管轄だ。
 だが殿下は陛下に抑圧され続けてきたせいで、強くは出られない。
 陛下を止められる者がいるとしたら、今の宮廷では私くらいだろう。

 「はぁ……」

 誰もいなくなった会議室で、誰にはばかることなく盛大なため息をつく。
 選民意識の塊で、そのくせ義務も果たさず権利ばかりを主張する強欲爺。国を統べる者の自覚はなく、おかげで国政はめちゃくちゃだ。
 その性質を一早く見抜き、厳格で有名な前王妃と結婚させた先王の慧眼は見事だが、まさか先王と王妃様がこんな早く亡くなるとは、誰も予測できなかっただろう。

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