悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 殿下を執務室に押し込み、部下に監視を命じて離宮へと向かう。

 上級女官の個室が並ぶ最上階へ上がると、片扉が開いた部屋があり、下級女官が控えていた。
 中からは浮かれた声が聞こえてきて、思わず眉間にシワが寄った。
 扉を軽く叩いて入る。

 「おお、ルキウスではないか」

 陛下は私の姿を認め、見たこともないほど凛々しい顔つきで頷いた。

 張り切る場所が違うだろう。
 呆れのあまり半眼になってしまう。

 「その方が例の宰相様?」

 澄んだ強い声。
 目を向けると、そこには目を瞠るほどに美しい女がいた。

 ソファに腰掛け優雅に足を組み、頬杖をついて傾ける顔の角度。気だるげな微笑みの温度。
 自分で持ち込んだ安物の衣装を身につけているはずなのに、高級品に見えてしまうのは顔の造形とスタイルのおかげか。

 その女は貴族令嬢だらけのこの後宮で、ひとつも見劣りすることなくこの豪華な部屋に馴染んでいた。

 「うむ、ルキウスといってな。宰相とはいえこの通り若造だ。経験も浅いし、いちいち余の判断を仰ぎに来おる」

 紹介され、反射的に一礼しながら顔が引きつる。

 よくもそんな妄言を。書類の文章もまともに読めぬような男に、判断など一度として求めた覚えはない。
 分かりやすく要約した内容を伝えたところで、「そなたに任せる」以外の返事をしたこともない能無しのくせに。

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