悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 罵倒を堪えて黙っていると、ふと視線を感じロベリアの方を見る。
 思い切り目が合ったが、真顔のまま彼女は逸らさなかったのでしばらく見つめ合う形になった。
 その瞳に、形容しがたい意思のようなものを感じて、首を傾げそうになる。

 もしやどこかで会ったことが?

 「……まあ! さすが陛下。国のために寝る間も惜しんで働いていらっしゃるのね」

 そう聞こうと口を開いた瞬間、パッと視線を逸らされた。

 「そうだとも。もしや疑っておったか?」
 「だって、毎日いらっしゃるのですもの。実はお暇なのかしらって」
 「忙しい合間を縫ってでも、ロベリアに会いに来ておるのだ」
 「あら……でもそれでは宰相様が困ってしまうわ」

 ロベリアが私へ水を向ける。そのセリフは嘘寒く、さっきのは何かの幻だったのだろうかと少し混乱しそうになる。

 「お恥ずかしい限りです。若輩ゆえ、お二人の貴重なお時間を奪って申し訳ありません」

 しかしこの好機を逃すわけにはいかない。

 「ですが、陛下の決裁が滞っております。至急執務室へ。それから国民からの要望書が山積みですのでそちらにも目を通していただきたく」

 ロベリアの前でいい格好をしたいはずの陛下に、畳みかけるようにすべきことを並べ立てていく。

 「い、いやしかし、今はロベリアとの時間が──」
 「あら、いけませんわ陛下。王たるもの、お仕事が優先よ」

 ロベリアが陛下の手を取り、顔を近づける。囁く声は甘いが、有無を言わさぬ強さがあった。

< 36 / 109 >

この作品をシェア

pagetop