悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「……仰せのままに」

 けれど私はそれ以上反論せずに頷いた。
 フォロー役不在では何もできないと思い知って、少しは反省すればいい。

 「可愛いロベリアよ。こいつは仕事ばかりの堅物だから、飽きたら好きな時に追い出すがよい」
 「ふふ、分かったわ。頑張ってね陛下」

 自信満々な陛下に恭しく一礼し、部屋から送り出す。

 扉は開いたまま、部屋の中と廊下には下級女官が一人ずつ。
 それだけあれば間違いなど起こりようもないと判断したのだろう。
 陛下の尻拭いで四六時中王宮を走り回っている私を、色事に縁のない男だと高を括っている。舐められたものだ。
 だが別に構わない。後宮の女になど、興味がないのは本当だ。

 「……さて」

 頭を切り替え、くるりと振り返りロベリアに向き直る。

 ロベリアは薄く笑っていた。
 陛下に向けていた媚びるような笑みとは違う、どこか挑発的な笑みだ。
 露骨に私を計る視線に、気づかぬふりでソファに腰を下ろし、機先を制するように口を開いた。

 「何を企んでいる」
 「あら、藪から棒になんですの?」

 不躾な言葉に動じることなく、ロベリアは楽しげに返す。

 貴族令嬢さながらの口調が付け焼刃に聞こえないのは、この一ヶ月で他の女官たちから学んだからなのか。
 だとしたらロベリアはおそらく地頭がいい。
 陛下の見栄も、私の苛立ちも、見抜いた上で私を残らせた。
 上手く取り入って後宮で権力を得るために協力させたいのか。
 あるいはその美貌で屈服させ、口出ししないよう躾ける気か。

 どちらにせよ、言葉通り暇つぶしのために留め置いたわけではなさそうだ。

< 38 / 103 >

この作品をシェア

pagetop