悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 不敬罪スレスレの親しみを覚えさせる立ち回り。
 開けっぴろげなようでどこか謎めいた曖昧な笑み。

 この短時間の会話だけで、陛下が夢中になる理由が理解できる。
 だが、だからこそ。

 「陛下を篭絡したところで、王宮は乗っ取れないぞ」

 隠す気のない牽制にもロベリアは怯まず、むしろ面白そうに目を細めた。

 「そうかしら。あたしがその気になれば、簡単に傾きそうじゃない?」
 「……」

 一瞬、喉が熱を持つ。
 安い挑発だ。視線だけを鋭くするが、彼女は笑みを深めるばかりだ。

 「忠告しておく。ここは庶民の遊び場ではない。後宮の秩序を乱すなら、たとえ陛下の寵を受けようと容赦はしない」
 「まあこわい。宰相様って女性にも厳しいのね」
 「あいにく、男女平等主義でね」

 ロベリアが笑う。無邪気に。艶やかに。
 これも計算なのだろう。
 彼女は一挙手一投足にいたるまで、自分がどう見えるかをよく理解した上で振る舞っている。
 それらはすべて己の輪郭を隠すための仮面にすぎない。
 そう確信していた。

 「あたしがこの国を支配すると言ったらどうするつもり?」

 ロベリアが不敵に笑う。

 「全力で叩き潰すのみだ」

 低く告げると、彼女の笑みがほんのわずか深くなった。まるで「上等だ」とでも言うように。

 ロベリア。
 国を食い潰す愚王が、心を奪われた女。
 放置すれば、必ず災いになる。
 エミリオ殿下には任せられない。ここから先は、私自身で食い止めなくては。

 睨みつけながら決意する私に、悪女がニィ、と赤い唇を吊り上げた。
  
< 39 / 67 >

この作品をシェア

pagetop