悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
第二章 誰もが夢中

▽セルヴァン・ラスセルト

 ロベリアの部屋は日ごとに肌に馴染んでいく。
 茶器の立てる微かな音。
 窓辺の光。
 控えの女官に気づかれぬよう秘めやかに示す指先の合図。

 すべてが余のために用意された舞台装置のようで、抗いがたくこの場所に足が向かう答えのようでもあった。
 今や生まれ育った私室よりもこの部屋の空気が恋しかった。

 「王様ってずいぶん暇なのね」

 ロベリアが頬杖をついて笑う。
 冗談めかしながらも、その声には隠しようのない甘さがある。
 その巧妙な駆け引きに、余の心はいつだってかき乱される。

 今まで寵を与えた女は皆、媚びて擦り寄るか、怯えた笑みでへりくだるか、選ばれし存在と勘違いして傲慢になるかのどれかだった。
 だがロベリアはそのどれとも違う。
 初めて会ったあの夜から余裕の笑みを崩さず、余を翻弄し続けていた。

 「おまえのことばかり考えて、仕事など手につかぬのだ」

 自然と彼女を喜ばせるセリフが口をつく。
 余の思い通りにしていい後宮の女官など口説く必要もないはずなのに、ロベリアを前にすると、なぜか愛を乞う愚かな男のようになってしまう。
 だがそんなお遊びも悪くはない。

 「呆れた人ね」

 ロベリアは肩をすくめ、涼しく笑う。
 国王からの過分な言葉に、喜びも咎めもせず、いつも一言で軽くあしらってしまう。

 そんな扱いは生まれて初めてだ。
 確かに悔しさを感じているはずなのに、胸の奥が熱で満たされていく。

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