悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「残念だったわね。あなたなら今宵陛下の訪れさえあれば、すぐにでも上級入りできたでしょうに」

 可哀そうに、とイレーヌが慰めるように私の肩をポンと叩く。
 半年以上も陛下の足が遠のいている彼女にとって、この状況は格好の娯楽なのだろう。

 「いえ、私などではとても……」
 「安心なさい。相手は庶民だというし、すぐに飽きるでしょう」

 なるほど、だからこの余裕なのね。
 私のことはともかく、陛下の関心を得た新人に悋気を起こさない理由に納得する。

 「慰めてくださりありがとうございます、イレーヌ様」

 殊勝な態度で頭を下げると、イレーヌは満足げな顔で頷いた。
 そうして「気が向いたら明日は来てくださるかも」と優しい微笑みを残し、嘲笑を隠しもしなくなった女性たちを連れて去っていく。
 ドアが閉まりシンと静まり返った部屋の中、どさりとベッドに倒れ込む。

 「はぁ~、……ふふっ」

 無意識にこぼれ落ちた気の抜けた声に、自分で笑ってしまう。

 そうか、私は嫌だったのね。陛下に身体を明け渡すということが。
 そんなことを今更改めて実感する。

 教育期間中、陛下と顔を合わせることは何度もあった。
 けれど常に他の女官が同席していたし、深い話などは一度もしていない。
 彼は自分の話ばかりだったし、私の見た目以外に興味はないようで、ぎこちない笑みを浮かべ相槌を打つので精一杯だった。

 そんな相手に、この身を委ねるなんて。考えるだけで胸が苦しくなる。
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