悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 あの日ルキウスがこの部屋でロベリアと何を話したのか知らないが、余の目を盗んではロベリアに「余計なことをするな」と釘を刺しているらしい。

 「気にせずともよい。あやつができるのはせいぜい小言を言うくらいだ」

 結局のところ、直接余に逆らうことなどできはしない。
 生まれながらの王たる余に、表立って歯向かえば辞職に追い込まれるということを分かっているのだ。

 「おいで、ロベリア」
 「あら、ダメですわ陛下」

 安心させようと伸ばした手を、ひらりとかわされる。

 「おさわり禁止。宰相様の言うことは守らないと」
 「ここに奴はいないのにか?」

 からかうように微笑まれて唇が歪む。

 「ええ。どこから告げ口されるか分からないし、追い出されたくないもの」

 ちらりと控えの女官に視線をやって、ロベリアが意味ありげに笑う。
 女官は気まずそうに目を逸らした。あれは確かイレーヌの子飼いの娘だったか。
 後宮は女同士の足の引っ張り合い。それを身に染みて分かっているのだろう。

 「……まあよい。教育期間が終わるまでの楽しみにとっておこう」

 最初はルキウスのその制約が鬱陶しかった。
 どうせ手を出しても分からないだろうと高を括ってもいた。

 けれどロベリアが駆け引きを楽しむように余の手をかわすのを見て、次第にこのやりとりも悪くないと思えるようになってきた。
 どうせ一年半後には余のものになるのだ。せいぜいこの児戯のような期間を楽しもうではないか。

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