悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「また宝物庫の品が減っているようですが」

 執務室に戻ると、ルキウスが冷水のような声音で言い放った。

 「ただの側室候補に国宝を下賜するなど、前代未聞です」
 「ええいうるさい。前代未聞ならば、これを前例にすればよい」

 飽きもせず説教じみたことを言ってくるルキウスにうんざりしながら言い返す。
 後宮への贈り物なら、外部に出たわけではない。ただ王宮の宝物庫から離宮の個室に移動したというだけの話だ。そんな目くじらを立てるようなことでもあるまい。

 「どうせ余のものになるのだ。それくらい大目に見よ」

 分からず屋に言い聞かせるように呆れながら言うと、ルキウスの顔がみるみる険しいものへと変わっていく。
 思いがけない反応に、こちらが怯んでしまう。

 「……『余のもの』とは、まさかあの者を王妃に据えるおつもりですか?」

 責めるような口調だ。しかしそれは怒りというより、焦燥が滲んでいる。

 「い、いや」

 ルキウスらしからぬ動揺に、深く考えもせずほとんど反射的に口を開く。

 「さすがにそこまでは――」

 否定しかけて、舌の先が甘くしびれる。

 王妃。
 そうだ、その手があった。
 王妃の冠を与えれば、さすがのロベリアも、きっと。
 『呆れた』といういつもの声が、笑顔が、わずかにほどける像が脳裏に浮かんだ。

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