悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 夜、王族しか知らぬ抜け道を使って離宮へ続く廊下を一人歩く。
 身の内で燻るこの熱を、どうにか解放したかった。

 ロベリアに手を出すことができないのなら他の女で代用すればいい。
 明かりを消せば十分だ。

 そうだ、アイリスを使おう。
 初夜をすっかり忘れていたが、仕切り直しに来たと言えば喜ぶだろう。
 あれも美しい娘だ。そういえばロベリアと少し声が似ている気がする。なんと都合がいいのか。

 静まり返った深夜の離宮を、窓からの月明かりを頼りに進んでいく。
 その時だった。

 「陛下」

 耳に馴染んだ声に振り返る。
 そこにいたのはイレーヌだ。
 目が合うと嬉しそうに微笑み、真紅の裾を波打たせ、熟れた果実の香りをまとって駆け寄ってくる。

 「最近、お通りがなくて……寂しゅうございます」

 潤んだ瞳。甘えるような声。
 十年前、後宮が形を得たその日からここの住人となった古馴染み。

 新しい玩具に飽きるたび、結局はこの女のもとへ舞い戻った。
 名門カリスティア侯爵家の血統に裏打ちされた知性。肉感的な身体。男心をくすぐる話術。
 そういったものに、たしかに心を傾けていたこともある。
 だが。

< 46 / 142 >

この作品をシェア

pagetop