悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽イレーヌ・カリスティア

▽イレーヌ・カリスティア


 陛下が最後にわたくしの部屋を訪れたのはいつだったか。
 指折り数えるのもばかばかしくなって久しい。

 新しい女の元に通うたび「寂しい」と拗ねてみせれば、嬉々としてわたくしのもとへ戻ってきたのに。
 今回は何かが違っていた。

 昨夜のことを思い出して無意識に爪を噛む。

 冷たい声。
 興味の失せた熱のない目。
 わたくしの手を振り払って去っていく頑なな背中。

 今までの手が通用しないことに、らしくもなく焦りを覚え始めていた。

 原因など考えるまでもない。
 少し前に後宮に転がり込んだ、ロベリアという街娘だ。
 ただでさえ目障りだというのに、あの女は見せつけるように陛下からのプレゼントを身に着けている。しかも日替わりでだ。

 ロベリアの部屋に届く箱は、日ごとに大きく、高価になっていく。
 真珠は粒が増え、宝石は色が濃くなり、ドレスは光沢を増すばかり。
 自分のものと並べると、はるかに見劣りしてしまう。
 それすら最近はまったく贈られていないというのに。

 さらに不快なのは、一階の共用スペースにまったく姿を見せないということ。
 礼儀としての挨拶すら寄越さない。先住者への敬意を欠いた振る舞いは、わたくしへの宣戦布告に等しい。

 新入りというのは下級・中級にかかわらず、この環境に馴染むために先住の女官たちとの交流を積極的にするのが暗黙の了解だ。
 生まれ育った場所とは全く違う女の園で、誰の庇護下に入れば安泰かを見極めるために。

 だというのにロベリアは、そんなもの不要という顔で上級女官の居住エリアから出ず、誰とも交流しようとしない。
 陛下の庇護があれば十分と言いたいのだろう。

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