悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 勘違いして思い上がっているロベリアを、せめてこき使って身の程を教えてやろうと思ったのに。
 個室のみが特例で下級女官として下働きをするという話すら「陛下がいついらしてもお相手ができるように」とかいうふざけた理由で免除されているのだ。

 「いかがです? イレーヌ様。いま王都で流行りのチークです」
 「ううん……困ったわリュシー。鏡が曇っていてせっかくのお化粧がよく見えないの」

 頬に手を当て眉尻を下げため息をつく。
 化粧直しを命じられたリュシーが、一瞬怯えたような顔をした。
 けれどわたくしが部屋の掃除をしている下級女官にチラリと視線をやると、すぐに意図に気づいて毒のある笑みに表情を変えた。

 「ちょっとあなた! まさかイレーヌ様の鏡台を磨くのに手を抜いたの⁉」
 「いっ、いえ! いつも通りちゃんと……!」
 「言い訳は結構よ。イレーヌ様に謝罪なさい」
 「で、ですがっ」
 「ごちゃごちゃうるさいのよ!」
 「きゃあっ!」

 泣きそうな顔で必死に言い訳をする下級女官の胸倉を、リュシーがつかんで無理やり床に這いつくばらせる。

 「さっさと謝っちゃった方が楽よ? ホラ、申し訳ありませんでした、って」

 顔を床に伏せたままガタガタ震える下級女官のそばに屈み込み、ヴェロニカが優しく囁きかける。
 それを救済だと思ったのか、下級女官が縋るような目でヴェロニカを見つめた。

 「も、申し訳ございません、でした……」

 涙をこぼしながら女官が平伏するのを見て、リュシーとヴェロニカは満足げな笑みを浮かべた。
 相変わらず見事な連携だ。彼女たちはわたくしが後宮で快適に過ごせるよういつも心を砕いてくれる。
 今日もわたくしの気分が優れないことをすぐに察して動いてくれたのだろう。
 けれど残念なことに、ここのところずっと感じているイラ立ちは少しも薄れなかった。

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