悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「あらロベリアさん。素敵なお召し物ね」
 思わぬ登場に狼狽えるリュシーとヴェロニカを制するように、余裕の笑みで社交辞令を言う。
 彼女は銀糸の刺繡がたっぷりあしらわれたドレスに身を包んでいた。身分不相応なはずなのにそれなりに様になっているのは、腕のいい女官でもつけてもらったからだろう。
 「ありがと。でさ、これなんだけど」
 「あら、なんですのそれは?」

 社交辞令を返さずさっさと本題に入る不躾さももう慣れた。
 いちいち目くじらを立てるほど子供ではない。

 ロベリアの右手に載せられた小箱には見覚えがある。
 それはさっきまでリュシーが得意満面にしゃべっていた香水の箱だった。

 「あたしの荷物に紛れてたけど、これあなたのでしょう?」
 「わたくしの? さぁ、心当たりはないけれど……」

 表情を崩さず冷静に答える。嘘はついていない。
 あれはリュシーが勝手に用意したものだし、わたくしに宛てたものでもないから。

 「そう? どっちにしろあたしはコレいらないから、よかったらイレーヌさまに差し上げるわ」

 にこりと笑いながら部屋に侵入し、ロベリアが箱をこちらに放り投げる。
 慌てて受け止めると、ロベリアは「ナイスキャッチ」と庶民丸出しの軽口を叩いた。

 「じゃ、あたし行くね」

 ひらひらと手を振って踵を返す。

 ヴェロニカとリュシーが青ざめた顔で視線を交わし合っていた。
 彼女たちはこれまでに何度もロベリアに嫌がらせをしてきたが、そのことごとくが回避され失敗に終わっている。
 まるで彼女たちの行動を先読みされているみたいに。

 「お待ちなさい!」

 何もかも上手くいかないイラ立ちに、少し冷静さを欠いているという自覚はある。だが止められなかった。
 ロベリアはわたくしの呼び止めに応えてゆっくりと振り返った。

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