悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「なに?」
 「……あなた、よほど夜の生活がお上手みたいね」
 
 微笑みながら言うと、ロベリアが無言で片眉を上げた。
 さすがの彼女も、これが侮辱だと理解できたのだろう。

 「陛下はすっかりあなたに夢中だわ。どこでそんな技を習得したの?」
 「あはっ、本当にそうですわね。酒場でお仕事されてたと伺ったけど、もしかして男性のお相手もする特殊な場所があるのかしら」

 わたくしの意図を汲み取って、リュシーがすかさず先を続ける。

 「もう、リュシー様ったら。その言い方だと、まるでロベリアさんが娼館に勤めていたように聞こえてしまいますわ」

 ヴェロニカが毒々しい笑みを浮かべながらリュシーをたしなめる。

 「ごめんなさい、そんなつもりはなかったんだけど」
 「はっ」

 白々しいリュシーの謝罪を、ロベリアは鼻で笑った。

 「教育期間中ですもの。陛下はあたしに指一本触れていないわ」

 勝ち誇った顔でロベリアが信じられないことを言う。
 ありえない。
 こんな教養も品性もない女が、身体で篭絡する以外に女好きの陛下を虜にする手段なんて。

 「後宮の取りまとめ役なのに、規則をご存知ないの?」

 ほんの少し語尾を上げる。
 そこに嘲笑が含まれているのに気づいて、怒りに我を忘れそうになる。

 「新人を侮辱する暇があるのでしたら、自分磨きでもされたらいかが?」

 ツカツカと無遠慮に近づき、諭すような言葉とともに、ロベリアがわたくしの頬を親指で拭う。

 「このチーク、あなたには全然似合ってないみたい」

 視界の端で、リュシーが息を呑むのが見えた。

 「せっかく素材はいいのに、全部台無し」
 「……覚えていなさい」

 言葉にした瞬間、そのセリフの安っぽさにうんざりする。ロベリアは答えず目だけで微笑み、裾を翻して去っていった。

< 52 / 172 >

この作品をシェア

pagetop