悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「……なんてね。実は少し疲れてるんだ。父のフォローをしているせいで」
 「そう、でしたの……」

 苦笑に変わるのを見て、冗談だったのだとホッとする。
 よく見ると、確かに疲れた顔をしていた。
 わたくしはロベリアをどうにかしなくてはという危機感に囚われて、殿下を蔑ろにしてしまったのだ。

 殿下は挽回のチャンスをくれることなく、本当に何もせずに部屋を出て行った。

 陛下のフォローで疲れたと言っていた。
 ではそれはロベリアのせいということだ。
 彼女が陛下を束縛して離さないから、ロエル殿下がわたくしのもとでくつろぐ余裕をなくしている。

 「あの女、どこまでもわたくしの邪魔をする気のようね」

 ギリリと爪を噛み、殿下が出ていったばかりの扉を睨む。
 腹の奥底で、燻っていた炎が燃え上がるのを感じた。

 このままではとても眠れそうにない。
 気持ちを落ち着けるために部屋を出る。

 ろうそくの小さな明かりを片手に、あてどなく後宮内をさまよっていると、微かに話し声が聞こえてきた。
 咄嗟に火を消し、声のする方に近づいていく。

 長い廊下の曲がり角。その向こうから、言い争うような男女の声。
 そろりと覗き見てみると、そこには二つの影があった。

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