悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽ロエル・ラスセルト

▽ロエル・ラスセルト


 父上が王宮を一週間空けることになった。
 隣国との会談の場を設けたらしい。

 そう聞いて、思わず笑ってしまった。
 ルキウスはとうとう父上の怠慢に耐えかねて、物理的にロベリアから引きはがすことにしたらしい。
 あいつ以外に、色ボケた父上を離宮から引きずり出せる人間はいない。

 千載一遇のチャンスだ。
 今日こそ父を骨抜きにした『魔性の女』の正体を確かめなくては。

 好奇心を大義名分で塗り固めて、イレーヌの元を尋ねる前に少し寄り道をすることにした。

 ノックを二度。返事はない。声をかけずドアを開けると、部屋の奥で女がこちらを振り返った。

 「……部屋をお間違えでは?」

 落ち着いた声だ。
 見知らぬ男が勝手に入ってきたというのに、驚きも慌てふためく様子もない。
 ただアーモンド形の大きな目だけが、うっすら愉快そうに細められた。

 目を奪われる、とはこういうことを言うのだろう。

 「――間違いではないよ」

 掃除の下級女官と区別がつくだろうかという心配はいとも簡単に払拭された。

 照明を受けてキラキラと輝くサファイアのブローチ。
 喉元で静かに光る乳白色の真珠。
 銀糸で花を描いたドレスが肌の線に沿って豊かに波打つ。

 そのどれもが見覚えのあるものだ。
 母を、祖母を、会ったこともない祖先を飾り立てていたはずのそれらが、まるで最初からこの女のために誂えたようにそこに存在していた。

 なるほど、父上が貢ぎたがるわけだ。
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