悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「第一王子のロエルだ。挨拶が遅れたね」
 「ロベリアですわ。ご機嫌よう、殿下」
 強い納得感を覚えながら、進められる前に勝手にソファに腰を下ろす。

 「ホラ、君も座りなよ」
 「お許しいただきありがとう存じますわ、殿下」

 部屋の主であるロベリアが、クスクス笑いながらオレの正面に座った。
 ロベリアは美しいだけでなく冗談も解する女らしい。わざと偉そうに振る舞っても、機嫌を損ねることなく付き合う懐の深さを感じて、満足の笑みを浮かべる。

 このソファも最上級のものをわざわざ運ばせたのだろう。
 街娘風情に入れ込みすぎだと、呆れる気持ちは失せていた。

 父上はこの女に相応しいものを贈っただけ。
 宝物庫から適当に持ってきた小箱が、懐で主張するように硬さを伝えてくる。
 つまらない対抗心が喉に上がり、口が勝手に動いた。

 「これ、君にあげるよ」

 蓋を開けてみせる。箱の中で、薄紅の石をあしらった耳飾りが小さく光った。
 前回何もせず帰ったことで拗ねているであろうイレーヌに、ご機嫌取りで渡すはずだった物だ。
 適当にとはいっても、あの女なら大喜びするだろう逸品だ。
 しかしロベリアは中身を一瞥しただけで、すぐに興味の失せた目でオレに視線を戻した。

 「豪勢ね。こんな高価なもの、女官に挨拶のたび配ってらっしゃるの?」

 嬉々として飛びつくでもなく、つんと突き返すでもなく、掌で遊ぶみたいに箱を閉じる。
 思っていたような反応が返ってこないことに気分を害される。
 きっと価値が分からなかったのだろう。所詮は庶民の娘か。
 あるいは、父のプレゼント攻撃で麻痺しているのかもしれない。
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