悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「まさか。君は特別さ。父のお気に入りなんだろう」
 
 不発に終わった悔しさなどおくびにも出さず、軽口で様子を見る。

 「ふふ」

 ロベリアは意味深に笑って、否定も肯定もせず、得意がることもなく、まだ湯気の残る紅茶を優雅に飲んだ。
 会話の主導権を握られているようで不快なはずなのに、不思議な高揚感が胸を満たしていく。

 愉快な気持ちになって、ロベリアの隣に座り直す。
 彼女はカップをテーブルに置いて、オレの行動を観察するように背もたれに頬杖をついた。

 「面白い。噂以上だ。ルキウスが警戒する気持ちもよく分かる」
 「でた。堅物宰相様ね」

 揶揄を込めて言うと、ロベリアが露骨に顔を顰めた。
 貴族令嬢は絶対にしない表情だったが、不快さはない。
 むしろようやく感情の揺らぎを見ることができて心が躍る。

 「ルキウスが嫌い?」
 「いいえむしろ大好き。まるで口うるさいパパみたい」

 にっこり笑ってロベリアが言う。相当鬱陶しがっているようで、笑いがこみ上げてくる。

 「ねぇ、父上が来なくて退屈だろう? オレと遊ばない?」

 美しく波打つ髪に指を絡め、誘うように微笑む。

 「……お父様に叱られてしまうのではなくて?」

 ロベリアはその手を拒絶せず、交渉の席についたとでもいうように唇を吊り上げた。

 「もちろんこっそりさ。どう? オレを味方につけたら何かと便利だと思うけど」
 「へぇ……たとえば?」

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