悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「そうだな……後宮は知っての通り愚弟の管轄だが、そんなもの表面上だけだ。あいつはオレの言うことには逆らえない。今もホラ、ここにいるのを見れば分かるだろ」

 本来、後宮に足を踏み入れられる男は、父上を除けば管理者であるエミリオと宰相のルキウスだけだ。
 父上もそう思っている。

 だがエミリオは、オレがここに出入りしていることに気づいている。
 気づいているくせに、目をつぶっているのだ。

 国王である父に逆らえないように、次期国王のオレにも逆らわない。
 冴えない弟だが、これに関してはなかなか賢明な判断だと思う。

 「新入りの立場は弱いだろう。ましてやいきなり父のお気に入りだ。針の筵なんじゃないか?」

 質問の形をとっているが聞くまでもない。
 イレーヌが明確に敵視しているのだ。間違いなく過剰な嫌がらせを受けている。
 あれはそういう女だ。

 「後ろ盾になってやろう。それに女官どもだけじゃない。面倒な堅物から守ってやることも難しくはないんだぞ?」

 手触りのいい絹のような髪を引き寄せ、そっと口づける。

 ロベリアが無言のまま、探るような目でオレを見た。
 オレだけを見ていた。

 それがこの上なく甘美な時間に思えて、このまま父が隣国で命を落とせばいいのにと本気で思った。

 「それは脅し? それともまさか口説き文句のつもりかしら」

 ロベリアが笑う。
 やはり頭のいい女だ。

 「その両方」

 意図を読まれていると気づき、下手に隠すことなく肯定する。
 ロベリアが笑みを深くして、挑発とも取れる視線を向けてくる。

 誘われている。
 そう感じて、ほっそりした顎に指を添え、唇を寄せた。

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