悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽アイリス・ガーランド

▽アイリス・ガーランド


 全女官共用フロアである後宮の一階には、広い談話室が二つある。
 そのうちの一つはイレーヌたち上級女官とその取り巻きとされる中級女官たちが。
 もう一つは、中立派や派閥に加わることすら許されていない下級女官たちが使っている。

 明確なルールがあるわけではない。
 けれどイレーヌの派閥が気に入らない人間たちを追い出し続けた結果、自然とそう住み分けられてしまったのだ。
 利用人数に明らかな偏りがあっても、イレーヌに文句を言える女官は後宮にはいない。

 「ねぇ、もう泣かないでタリア」

 あやすように背中をさすり、感情を昂らせた友人のタリアをなだめる。

 「だってアイリス様! ひどいんですよあの人たち……!」

 しゃくり上げながら語られる顛末は、聞かずとも見当がついた。
 イレーヌ派閥からの嫌がらせ。
 もともと敵対派や中立派には、些細なことにも難癖をつけてきた。

 けれどここ最近は、もはや言いがかりの域にまで達している上、嫌がらせの内容もエスカレートしている。
 タリアだけでなく、泣かされる子が後を絶たない。

 「ええ⁉ 洗顔用の水が跳ねただけで叩かれたの⁉ 心狭すぎじゃない⁉」
 「そうなの! しかも誰にもかかってないのに……!」
 「粗探しばかりして何が楽しいのかしら!」

 同じ談話室にいた女官たちが「なになに?」「またイレーヌ様?」と憤慨した様子で集まって話に加わる。
 彼女たちもこれまで何度もイレーヌ一派に嫌がらせを受けてきた。

 直接手を下さなくても、誰が命じているかなんてみんな分かっている。
 ここぞとばかりに「私もこんなことがあって」「わたくしなんてもっとひどいことを」とイレーヌの悪口大会が始まった。
 由緒正しく宮廷でも強い発言力を持つカリスティア公爵家の娘という立場に寄りかかり、プライドが高くて意地の悪いイレーヌ。
 皆、日ごろから鬱憤が溜まっていたのだろう。
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