悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「リュシー様なんて、イレーヌ様に気に入られるのに必死すぎて笑えてくるわ」
 「でもヴェロニカ様はイレーヌ様のいないところではお優しいわ」
 「でも止めてくださらないなら同罪よ」

 そのうちに取り巻きたちにまで話が及んで、聞こえないようこっそりため息をつく。
 陛下が新人に夢中なおかげで、初夜が中止になって以降も私はすっかり放置されている。

 けれど陛下に呼ばれないのは、イレーヌを含めた全員だ。
 安堵しているのは私だけで、陛下の寵を競い合ってきた女官たちは不安を感じ始めている。
 おかげで後宮内は常にギスギスした空気が充満していて、どこにいても居心地が悪い。

 いったいいつまでこんなことが続くのだろうか。
 暗澹たる気持ちでもう一度ため息をつく。

 「でも、さ。ホントどんな子なのかしら?」
 「分かる。気になるよね」
 「群れない孤高の女って感じ?」
 「えーでも庶民出身のくせに、お高く止まってない?」

 女官たちがクスクスと笑いを交わし合う。
 いつの間にか話題は、共通の敵であるイレーヌ一派から、彼女たちを翻弄する謎の新人へと移っていたらしい。
 女官たちの目には興味や好奇心の色が宿り、実に楽しそうだ。

 「ロベリアっていうんでしょ? 何人もパトロンがいる舞台女優だとか」
 「私は酒場でお客さんにたくさん貢がせてたって聞いたけど」
 「ヴェロニカ様は娼婦だっておっしゃってたわよ?」

 上級エリアから出てこないロベリアに、会ったことのある人間はここにはいない。
 私も名前くらいしか知らない。だというのに、噂だけは数えきれないほど聞いている。

< 63 / 206 >

この作品をシェア

pagetop