悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「きっととんでもない悪女よ」
 「娼婦なら手練手管ってやつがすごいんじゃない?」
 「きゃー! やだもう! はしたないわよ!」

 ほんの少しの情報と勝手な憶測で、あっという間に面白おかしく脚色されたロベリア像が作り上げられていく。
 タリアがすっかり泣き止んで輪に溶け込んでいるのを見て、私はそっと席を立った。

 談話室を出て、洗濯所へ向かう。
 洗濯係の子が休憩に来たと言っておしゃべりに夢中になっていたから、きっとほったらかしになっているはず。
 今日はいい天気だから、日が昇りきる前に代わりに干しておこう。

 窓からの日差しを受けて、ひとつ伸びをする。

 女の子同士のおしゃべりは楽しいけれど、知らない誰かのことをあれこれ決めつけて悪者にするのはどうにも苦手だ。
 それにロベリアと聞くと故郷に残してきた妹を思い出す。
 自分に自信がなく、泣いてばかりでいつも私のあとをついてきた可愛い妹。
 だからああいう場面では、なんだか妹まで悪く言われているようで、よく知りもしない人なのについ擁護したくなってしまう。
 名前が同じというだけで、馬鹿みたいだと思うけれど。
 故郷に焦がれる私にとっては、彼女を気にかけてしまう大きな要因だった。

 ふいに視線を感じて足を止める。
 振り返るが誰もいない。あたりを見回しても、足音や話し声すら聞こえてこなかった。

 「気のせいかしら……」

 気を取り直してまた歩き出す。
 最近こういうことが増えた気がする。
 誰かに観察されているような、見張られているような視線。
 だけど誰のものなのか心当たりがまったくない。イレーヌはもう私を競争相手と見ていないし、品定めのような視線を向けてきたロエル殿下も、いつの間にか興味の対象を変えていた。
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