悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ふふっ」
 「……へ?」
 「あっ、も、申し訳ありませんっ」
 
 殿下がぽかんと口を開けたのを見て慌てて表情を改める。

 「お気遣いいただきありがとうございます」

 微笑んで気遣いへの礼を告げる。

 「こんなこと言うのはよくないですけど、むしろ少しホッとしているんです」
 「そ、そうか……それなら、うん、よかった……」

 正直に今の気持ちを伝えると、殿下は気の抜けたような、どこか嬉しそうにも見える表情になる。

 陛下にも、ロエル殿下にも似ていない柔らかな空気を纏う人。
 覇気がないとか色気を感じないとか陰口をたたく人もいるけれど、私は彼を取り巻く優しい空気が好きだった。

 「そういえば、殿下こそなぜこのような場所へ?」

 第二王子である彼の方こそ、この場にふさわしくないことに気づいて尋ねる。
 途端にエミリオ殿下は苦虫を噛みつぶしたような表情になった。

 「あの、答えたくないことでしたら――」
 「実は……女官の一人に洗濯を押し付けられて」

 何か悪いことを聞いてしまったかしらと発言を撤回する寸前で、殿下は不服そうな顔で手に持っていた服を掲げて見せてくれた。

 「もちろん最初は断ったが、本当に強引で。人の話を聞かないし妙に強気で……まったく……」

 よほど不本意なのだろう。恨み節が止まらない。

 もしかして例の新人さんかしら。
 ピンときて、喉元まで出た笑いを押し込む。
 彼女は女官だけでなく殿下まで振り回してしまうらしい。そう思うと、もはや爽快感すら覚えた。

 「――あ!」
 「え⁉」

 唐突に大きな声を上げてしまった私に、殿下が一瞬驚いたように目を丸くする。
 次の瞬間には、腰に佩いた剣の柄に手をかけ周囲を警戒するように見回していた。

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