悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「手伝うよ」

 返事を待たずにアイリスの手から木箱を受け取り、肩に担ぐ。

 「あら殿下っ、いけませんわ」

 慌てて取り返そうとするアイリスの手をひょいと避け、まるで競争するみたいに荷物の運搬を手伝う。
 気づけば夢中で体を動かしていた。

 下級女官たちが「頼りになる」「助かります」と口々におだててくれるのも悪くない気分だ。
 手伝いを阻止するのを諦めたアイリスが、ニコニコとそんな様子を見守っている。
 その視線がくすぐったい。

 「すごい、もう終わってしまいました!」
 「力仕事は得意なんだ」
 「王子様とは思えない発言です」

 胸を張って答えると、アイリスがクスクスと楽しそうに笑った。
 その頬に、作業中についたのだろう、泥汚れを見つけて自然と手が動いた。

 「失礼」

 断りを入れて、親指の腹でその汚れを拭う。

 「あ、え……」

 アイリスがはっと目を瞬かせ、頬が薄紅に染まる。
 その瞬間、自分が何をしたのか理解して、僕の顔まで熱くなった。

 「す、すみません、ありがとうございます」
 「いや……こちらこそ申し訳ない」

 軽率に触れてしまったことが急激に恥ずかしくなって、慌てて手を放す。

 「そうだっ、これを取りに来たんだった」

 ごまかすように言って、整理された籠の中から、ロベリアに言いつけられていた果物をパッと取る。

 「では」
 「はい、お気をつけて」

 逃げるように後ずさる僕に、アイリスが遠慮がちに手を振る。
 それに手を振り返し、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った。

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