悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ちょっと、皮ごと食べろという気?」

 ぼんやりしたまま果物を差し出した僕に、ロベリアが不服そうに言う。

 「え? ああ……」

 ほとんど無意識に押し返された果物を受け取り、テーブルの果物ナイフで皮を剥く。
 その果物の弾力が、先ほど触れた頬の柔らかさに重なってじわりと指先が熱を持つ。
 それを拒絶することなくうつむき加減に笑う表情が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

 「なによボーッとしちゃって。薄気味悪いったら」
 「うるさいな。ほら、剥いたぞ」

 ロベリアが皿を受け取りながら、不快そうに顔をしかめるのも気にならなかった。
 むしろイレーヌたちに執拗に絡まれてストレスが溜まっているのだろうなと、哀れみさえ抱く余裕があった。
 それほどまでにアイリスの笑顔が胸を満たしている。

 「君も、アイリス殿を見習うべきだ」

 何気なく口にした瞬間、空気が薄く張り詰めるのを感じた。
 ロベリアの目が、ゆるく細められて鋭さを宿す。

 「……アイリスって、陛下のお気に入りだったっていう子よね?」

 にっこりと、迫力のある笑み。
 背筋に冷たいものが走る。失言だと気づいた時にはもう遅かった。

 「いや、それは過去の話で……誰に聞いたんだ」

 慌てて取り繕おうとして気づく。
 ロベリアが後宮入りした日にはもう噂の対象はアイリスから逸れていたはず。それなのになぜ。

 「聞いてもないのに教えてくださる方がたくさんいるのよ」

 ロベリアはうんざりしたように肩を竦めた。
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