悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「生憎だけど、あたしたちはまだ清い関係なの」
 「……清い関係だと?」
 「ええ、あたしが退屈しないうちはね」

 オレの手をやんわり外し、ロベリアが艶やかに笑う。
 その態度があまりに堂々としていて、とても嘘を言っているようには見えなかった。

 もし。
 もし本当なのであれば、父が自主的に我慢するとは思えない。
 おそらくロベリアがそのくだらない規則を守らせているのだ。
 さっさと抱かせてしまえば、もっと簡単に執着させることができるのに。一体なんのために?

 そんなの決まっている。本当に愛している男以外に、触れられたくないのだ。

 「ねぇ、あなたからも陛下に言ってくださらない? 最低限の公務の時以外、ここに入り浸りで困っているの。お願いよ」

 眉根を悩まし気に寄せて、ロベリアが上目遣いに言う。
 父上にいい顔をするのは野心のため。それだけだと薄々気づいてはいた。だが国王の寵愛を独占できていること自体は誇らしく思っているのだと思っていた。
 それがまさか、父上の訪問回数を減らしたいほどに疎んでいたとは。

 そこまで考えて、すぐに気づいた。
 父上の求愛を受け入れず、純潔を守り、文句も言わずオレを迎え入れる理由。

 ロベリアが手に入れたがっているのは老いて力を失っていくばかりの父上ではなく、次期国王であるオレなのだ。

 なるほど。
 ではこの『お願い』というのは、オレに乗り換えたいという合図か。
 「いいだろう。おまえがそう望むなら」

 オレが応じると、ロベリアは満足そうに微笑んだ。

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