悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 確かな手応えを得て、暗い廊下を進む。

 とにかく父上の足を後宮から遠のかせる必要がある。
 そのためにはどうすればいい。もっと仕事をさせるよう、ルキウスをせっつくか。

 エミリオはどうする。ロベリアとの逢瀬を邪魔するあの愚弟。
 たかが管理人のくせに、妙な使命感に目覚めやがって。

 「……ふ」

 ふと、必死に考えを巡らせているのがおかしくなって笑いが漏れる。

 最初はほんの火遊びのつもりだった。それがいつの間にこんなに。
 きっとこれも彼女の策略なのだろう。軽口の応酬も、つかまえたと思った瞬間ひらりと逃げるのも、誘うような甘い香りも。
 すべてはオレのために整えられた巧妙な罠だった。
 それにまんまと引っ掛かったというのに、悪い気はしなかった。
 その気になれば誰でも落とせるあの女が、自分に狙いを定めているというのは悪くない。

 微かな高揚感と、焼けつくような熱に押されてドアを叩く。
 ロベリアの部屋ではない。この熱を落ち着かせてくれるなら誰でもよかった。

 「殿下……! ずっとお待ちしておりましたのよ!」

 ノックのリズムでオレだと分かったのだろう。イレーヌは喜びに満ちた顔で出迎えて、首に腕を絡めてきた。

 「ああ。忙しかったんだ」
 「陛下を誘惑するあの女のせいね。まったくこれだから淑女教育もない庶民は……本来であれば政務をサボる陛下をお諫めするべき立場なの、んっ」

 冗長なおしゃべりが面倒で、唇で遮る。
 驚いたように身を固くしたのは一瞬で、すぐにイレーヌは従順にそれを受け入れ、慣れた身体を開いた。

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