悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「殿下ったら、今宵はずいぶんと情熱的でしたわね」

 性急に抱いたあと、イレーヌは上機嫌でベッドに弛緩する。
 前戯を省いたのを、彼女に飢えていたせいだと誤解しているらしい。おめでたい女だ。

 「本当に忙しかっただけですのね。わたくしったら殿下を疑って勝手に不安になって、馬鹿みたい」
 「ああ、そう言っただろう」

 馬鹿な自覚はあるらしい。
 適当な相槌に気を良くして一人で話を進めていくのを、服を着ながら聞くともなしに聞いていた。

 「ええ。ありえませんわ。殿下があの性悪女に騙されるなんて」

 ほほ、と上品に笑うが、その顔には醜悪な嫉妬が貼りついている。

 「ふふ、思い切ってルキウス様にお伝えしてよかった」
 「……なんの話だ」
 「あの女のことよ。陛下を誑かし、宮廷の男どもにまで色目を使い、いい気になってエミリオ殿下を使用人のようにコキ使う、あの非常識な女。ロエル殿下も困ってらしたでしょう? 陛下のフォローをして忙しいと」

 嬉しそうに顔を歪めるイレーヌに嫌な予感がする。
 こいつは自分の障害になるであろう女官を、排除することに少しも躊躇わない女だから。

 「だからわたくし、宰相様に『彼女が謀反を企てている恐れがある』とお伝えしたの。うふふ、これからが楽しみですわね」

 固く握りしめた拳が震える。愚かな女だと思っていたがここまでとは。
 頭の芯が一気に熱くなる。

 「勝手な真似をするな!」
 「きゃっ!」

 耐えかねて一喝すると、イレーヌが小さく悲鳴を上げた。
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