悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「なに、どうして――」

 困惑と怯えを滲ませた視線が鬱陶しい。
 その視線を振り切るように、何も言わず立ち上がる。

 これ以上この馬鹿女と話していると反吐が出そうだ。
 返事もせずに部屋を出た。怒りで視界が赤く霞む。

 先ほどのロベリアの顔が浮かぶ。
 もし彼女が後宮から追放されたら。
 いや、追放だけで済むならあとでオレが拾ってやればいいだけのこと。
 だが処刑なんてことになったら。

 「お待ちください殿下……! 待って、ねぇ! 待ってよロエル!」

 服を着る余裕もなかったのだろう。
 シーツを身体に巻き付けただけのあられもない姿で、イレーヌが部屋を飛び出し追いすがってくる。

 部屋よりも明るい廊下の照明が、イレーヌの緩み始めた身体を容赦なく照らした。
 もうイレーヌがただの年老いたつまらない女にしか見えず、最後に残っていたわずかな情も消え失せ、無視して歩き出す。
 靴も履かずに出てきたイレーヌの、泣き叫ぶ声が遠ざかっていく。
 心は少しも痛まなかった。

 よりにもよってルキウスなんかに。
 あいつだけはいつまでもロベリアを警戒し続けている。
 排除できる口実があるのなら、捏造かどうかなんてロクに調べず、イレーヌのくだらない嘘を信じて牢に入れてしまうかもしれない。

 助けなければ。
 ロベリアが泣き叫び助けを求める声が聞こえた気がして、ギリリと引き絞られるように胸が痛んだ。

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