悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 数刻後、シャツの乱れを直しながら寝所を後にする。背後で小さな嗚咽が遠ざかる。
 それを聞いて少しだけ溜飲が下がった。
 今は混乱しているだろうが、朝には第一王子に抱かれたことを光栄に思っているだろう。

 「もし、ロエル殿下ではございませんこと?」

 声をかけられ振り返る。

 そこには可愛らしい少女が立っていた。
 今抱いた下級女官とは違う、明らかに磨き上げられたと分かる少女だ。

 「何か用か」
 「ごめんなさい、先ほどイレーヌ様と言い争われているのが聞こえてしまって」

 申し訳なさそうに言うこの少女には見覚えがある。

 「お前は確か……」
 「ヴェロニカと申します」

 そうだヴェロニカ。
 確かイレーヌの取り巻きの一人で、オレとの仲を教えられるほど信頼しているのだと言っていたか。

 「何かひどいことを言われたのではありませんか? 最近のイレーヌ様は少し、ご自分を見失っておられるようでしたから……」

 悲し気に眉尻を下げ、憂いを滲ませた声色。
 自分を庇護する人間を心配する、健気な少女に見えるのに。

 「ああ。嫉妬に狂っておかしくなっているようだ」

 どこか自分と同じ匂いを感じた気がして、苛立ちはまだ収まっていなかったが話を聞いてやることにした。

 「お可哀そうに……ですが殿下も、お顔の色が優れないようです。きちんと休まれています?」
 「いや、あまり」

 心配そうに言われ、確かに最近ロクに寝ていないなと思い出す。

 イレーヌに会いに行かない理由ではないだけで、忙しいというのは本当だ。
 父上のシワ寄せが、確実に時間と体力を奪っている。
 ロベリアに会えないのも父上のせいだというのに、腹立たしいことだ。
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