悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「……これは、何だ」

 乾いた声が出る。
 小さなその飾りを持つ手が、怒りで震えていた。

 「なぁに、それ?」

 とぼけた風でもなく、ロベリアが不思議そうに余の手元を覗き込む。

 「これは我が息子ロエルのものだ。なぜそれがここにある」
 「ああロエル殿下の? なら前にここに来た時に落としたのね」

 こともなげにロベリアが答えて、落ち着いた様子で紅茶を飲む。

 「なんだと?」

 信じられず重ねた問いに、ロベリアが眉根を寄せる。

 「いつも『監視役として各室を回っている』と仰っていたけど……あなたのご命令じゃないの?」
 「監視役、だと?」

 喉の奥が焼ける。ずっと欺かれていたのだ。
 ロエルは余の目を盗み、もう何度もこの部屋を訪れていた。

 後宮の管理は第二王子であるエミリオの職分だ。
 ロエルになど任せるはずがない。むしろロエルの立ち入りは禁じている。
 余の女官に手を出すに決まっているからだ。
 息子の浅はかな考えなど、余には手に取るように分かる。

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