悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「え? は、ちょっ、父上⁉」

 エミリオの横をすり抜け、離宮の正門を目指す。
 新しい女官を乗せた馬車が乗り入れるならそこだ。

 「お待ちください父上! アイリス殿がお待ちなのですよ⁉」
 「分かっておるというのにうるさい男だ……余はただ、たまには離宮を正面から見ようと思い立って寄り道をするだけだ」

 まとわりつくように追いかけてくる息子を、鬱陶しく手で払いながらも足は止めない。
 どうせキャンキャン喚くだけで、強引に止める度胸はないのだ。

 ルキウスを置いてきて正解だった。あやつがいれば、さすがに阻止されただろうから。

 「おや、ちょうど馬車が到着したようだ。一体誰が乗っておるのかのう」

 図ったようなタイミングで、正門前に馬車がスピードを緩めて入ってくるのが見えた。
 やはり神に選ばれし王たる者というのは、望みどおりに事が運ぶようにできているらしい。

 「困ります陛下。他の者に示しがつきません」
 「ふん、どこに他の者がおるというのだ」

 みっともなくオロオロし始めたエミリオを振り切るように、停車した馬車に向かって歩を進める。
 余は王だ。だからこそ、神の導きに従って然るべき。息子のような凡愚に、余の行動を止める権限などない。

 とはいえ、しょせんは街娘。
 バルメロが見出したとは言っても、所詮は「庶民にしては」という程度のものだろう。
 そう高をくくっていた。
 だが。
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