悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「立ち話もなんですわね、どうぞお入りになって。いい茶葉をいただきましたの」

 わたくしが誘うと、彼女たちは顔を見合わせ合ったあと、遠慮がちに入ってきた。

 「お願いね」

 リュシーに茶器を渡すと、彼女は一瞬の間のあとで「はい」と元気に頷いた。

 「やはりお顔の色が優れないですわ、イレーヌ様」

 隣に腰を下ろしたヴェロニカが、そっとわたくしの顎に手をかけ顔を覗き込む。
 メイクもしていない顔を見られるのは恥ずかしかったけれど、うつむこうとするのをヴェロニカの手が阻む。

 「実は、言おうか迷っていたのですけれど……」

 それから言いづらそうに口を閉じたヴェロニカが、他の女官たちと何事か目配せし合って、意を決したように再び口を開いた。

 「以前、ロエル殿下がロベリアさんのお部屋に入っていくのを見かけしてしまって」
 「……え?」

 声が掠れる。
 予感はしていた。殿下が冷たくなった理由。
 ロベリアを陥れるための嘘を、大声で咎められる前から本当は分かっていたのに。
 確信できるようなことを聞かされて、こんなにも動揺して苦しくなるなんて。

 「お部屋にこもってらっしゃるのって、もしかしてそのせいですの?」

 ヴェロニカの問いかけに、自分の顔が強張るのを感じた。

 さも心配げな声音は変わらないはずなのに。
 その瞳は愉快そうに濡れているのに気づいてしまったから。

 空気がひやりとする。
 だけどそう感じたのはわたくしだけだったようだ。

 ぎこちなく皆を見回すと、彼女たちの嘲りを含んだ視線がわたくしに集まっていた。
 さっきまであんなに親身に心配しているように見えていたのに、今はもうガラリと変わってしまった。
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