悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ああもしかして、監視が厳しくなったのはロベリアさんのいる上級エリアだけなのでは?」
 「でしたらイレーヌ様が飽きられたわけでもないかもしれないですね」
 「わぁ、よかったですねイレーヌ様!」
 
 囃し立てる声が一斉に弾ける。
 頬が引きつるのが自分でも分かった。

 この子たちはずっと待っていた。
 従順なふりをして、わたくしが隙を見せるこの瞬間を。

 「……お黙りなさい」

 冷ややかに言えば済んだはずだった。
 威厳と余裕を感じさせる冷たい声。
 たったそれだけで、彼女たちは怯えたように口を閉じるはずなのに。
 弱って掠れた声では、彼女たちは一歩も引かなかった。

 「どうしてもご心配なら、わたくしから殿下にそれとなく聞いて差し上げても」

 殿下に弄ばれただけのくせに、優越感をあらわにしてヴェロニカがせせら笑う。

 「結構よ。中級風情が出過ぎた真似をしないで」
 「まあこわい……そんなだからロエル殿下も『うんざりだ』とおっしゃるのよ」

 ヴェロニカが唇を尖らせる。
 伏せた睫毛の陰で、愉悦がきらりと光った。

 その瞬間、何かがぷつりと切れた。

 手近にあった香水瓶を掴み、テーブルの縁に叩きつける。

 「きゃーっ!」
 「何をなさるんですか!」

 甲高い悲鳴が耳障りだ。
 甘い香りが一気に立ちのぼり、床に飛び散ったガラスが鈍く光る。

 「黙りなさいと言ったでしょう!」

 何もかもがわたくしの神経を逆撫でして、今まで懸命に抑え込んでいた感情が一気に爆発した。
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