隠していた想いを伝える時

好きになった理由


 目を覚ますと、私は槙田くんの腕の中にいて、抱きしめられている状態だった。

 あの後、私……。そのまま寝ちゃったんだっけ。

 強い雨に打たれたことで、思ったより体力を消耗していて、さらにあんな……。


 甘い快感から解放された今、私は後悔した。

 付き合ってもいない人に、初めてを捧げてしまった。

 いくら振られて寂しかったからって。大学で人気者の彼に迫られたからって、最後まで許してしまうなんて。

 最後まですることを望むなんて、絶対にダメだった。


 隣で眠っている槙田くんの整った横顔を見つめると、すごく綺麗で見惚れてしまう。

 槙田くんの温もりはとても温かくて、心地よくて、このままこうして腕の中に居たいと思ってしまうけど、何も身につけていない状態であることは少し落ち着かない。

 槙田くんが起きる前に着替えよう。

 そう思って腕の中から抜け出そうとしたら、槙田くんが目を覚ましてしまった。


「相田さん……。離れていかないで」

 槙田くんは一度、目を開けると、またすぐに目を閉じて甘えるように抱きしめてきた。

「ま、槙田くん」

 彼の名前を呼ぶと、軽く触れる優しいキスをされた。


「ずっと相田さんのことが好きだったんだ。今は寂しさを埋める存在でもいいから、俺と付き合ってくれない?」

 そう告げた槙田くんの真剣な表情は、とても冗談を言っているようには見えない。

 でも、ずっと好きだったなんて、信じられない。

 みんなの中心にいるような人が、私なんかを好きだなんて、そんなの信じられないよ……。



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