可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 建物内を移動しながら、何度見ても不思議でアイリスはまたしても廊下で足を止めて窓を見てしまう。

 手を添えると、窓ガラスはとても冷たい。

(夜には風が拭いて激しく吹雪くこともある、か)

 説明で聞いた通りに吹雪いてはいない。

 基本的にこちらの領地では、嵐がやってくる時以外、日中は活動面で問題にはならないという。

「建国の神であり、王家の象徴でもある神獣のおかげだと言われていますわ」
「神獣……?」

 メイドたちは意外だという表情をかすかに浮かべる。

(あ、常識なんだわ)

 残念ながら『アイリス』は、嫁げる最低限の教育のみでほぼ放置されていたようなものだ。

 彼女は家族が滅多に使いもしない、人に自慢するためだけの書庫に行って足りないことを学んだ。上級作法については、妹に教える講師の姿を眺めて身に着けた。

(妹って、姉の美しさが気に入らなかったのではないかしらね?)

 ふと思い浮かんだ記憶に、睨み返す『妹』の姿を見つけた。あれは悔しがっている顔だ。
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